音声作品でよく問題になるのがノイズ。
折角頑張って作品を作っても、その中にノイズがあると聞いている人に違和感や不快感を与えてしまう可能性があります。制作者にとっては無視できない問題です。
これは当然HANASUにも当てはまります。もしご自身が制作したHANASU作品にノイズがある場合は可能な限り対応するのが望ましいでしょう。
今回はそんなノイズの中でも、ピッチ調声後に発生するUTAU特有のノイズについて、私がやっている修正方法をご紹介します。
ピッチ調声後に発生するノイズとは?
UTAUではピッチを調声した後に音声を再生すると、音声にノイズが発生していることがまれにあります。
音声サンプルをいくつか用意しましたので、どのようなノイズなのかを実際に聞いて確認してみましょう。
ピッチ調声後に発生するノイズサンプル集
今回は4つのノイズサンプルを用意しました。使用音源は毎度おなじみ重音テトです。
ノイズサンプル① 「LINEしろよ」
まずはこちら。とある動画用に作成したHANASUです(因みにその動画はまだまだ完成には程遠いです・・・)。
テト「LINEしろよ」
あまり目立つノイズではありませんが、どこにノイズがあったか聞き取れましたか?このサンプルでは「らいん」の「ん」の部分に「プチッ」というノイズが発生しています。
ノイズサンプル② 「というわけでダレン戦の続きです!」
続いてサンプル2個目。こちらは現在鋭意製作中の実況最新話に使用予定のHANASUです。
テト「というわけでダレン戦の続きです!」
このサンプルは結構分かりやすいのではないでしょうか。「ダレン戦の~」の「の」の部分ですね。サンプル①と違って「ブツッ!」と激しい感じのノイズです。
ノイズサンプル③ 「もうやめたけどねー」
そしてサンプル3個目。こちらも実況最新話で使用予定のHANASUです。
テト「もうやめたけどねー」
これはサンプル①よりもさらに分かりにくいですね。今回は「め」の辺りに微かにノイズが出ています。これくらいであれば無視してもギリギリ問題ないレベル。
ノイズサンプル④ 「やあっと実況動画k・・・」
これが最後のサンプルです。このHANASUは私がTwitterにあげている「日常HANASU」という作品で使用したものです。今回のデータは調声途中のものを使用しているため、セリフが切れています。
テト「やあっと実況動画k・・・」
こちらも少々わかりにくいサンプルですね。今回は最初の「あ」の部分に微かにノイズがあります。
以上が今回ご用意したノイズサンプルです。今回は重音テトのサンプルのみですが、デフォ子や桃音モモ等他の音源でも発生することがあります。
ノイズの対処方法
それではこのノイズの対処方法をご紹介していきましょう!
と言っても、やり方は至ってシンプル。ノイズが発生しているノートの先行発声、子音速度、STPのいずれかをちょっと変えてやるだけです。
簡単に手順を説明していきます。
手順その1 ノイズが発生しているノートを見つける
まずはどのノートにノイズが発生しているのかを特定します。分かりにくい場合はノートを1つずつ再生していくと見つけやすいです。
手順その2 ノートのプロパティを開いて先行発声、子音速度、STPの値を変更する
続いてノイズが発生しているノートのプロパティを開きます。プロパティはノートを右クリック→プロパティか、ノートを選択した状態でCtrl+Eで開けます。
プロパティを開いたら、先行発声、子音速度、STPのいずれかの値を変更します。
変更するといっても大きく変える必要はありません。原音値やデフォルト値に対して1上げるか下げる程度で大丈夫です。
調声の段階ですでに数値を入力している場合はその数値に対して上げ下げしてください。
先行発声と子音速度とSTP、どれを変えるべき?
結論から言うと、どれでも構いません!
どの項目も、1とか小数点以下の数値ならば変えても音声に大きな変化はありません。自分の好きな項目を変えてもらって大丈夫です。
しいて言うと、調声で数値を変えていないなら子音速度かSTPがおすすめ。先行発声は音源によりデフォルト値(原音値)が異なりますが、子音速度とSTPはデフォルト値が共通(子音速度は100、STPは0がデフォルト値)なので計算が楽です。
手順その3 ノートを再生してノイズがないか確認
それではノイズが発生していたノートを再生し、ノイズが無くなったか確認しましょう!
大抵はこれでノイズが無くなっているはずです。もしまだノイズが残っている場合は手順その2で変更しなかった項目の数値を変更してみましょう。または、数値の変更幅を引き上げてみてください。1でダメなら2、2でダメなら3といった感じですね。ただし、あまり大きく変えすぎると調声が狂ってしまいますのでご注意ください。
というわけでこの方法で先ほどのサンプルのノイズを修正してみました。いずれもSTPを1増やして修正しています。
○ノイズサンプル①修正後
○ノイズサンプル②修正後
○ノイズサンプル③修正後
○ノイズサンプル④修正後
どのサンプルもノイズが消えていますね。ノイズ処理成功です!
それでもまだノイズが消えない場合
以上がピッチ調声後に発生するノイズの対処法です。しかし、場合によっては
といったことも。その場合は他の原因が影響しているかもしれません。
①ピッチ曲線が途切れている
セリフの途中でピッチ曲線が途切れているとノイズになることがあります。ノート長を変更した後にピッチ曲線を修正し忘れていたり、拡張ピッチエディタでちゃんとピッチ曲線を引けていなかったりしているかもしれません。
この場合は再度拡張ピッチエディタを開いて途切れたピッチ曲線を綺麗に繋げましょう。
②原音にノイズが入っている
そもそも、音源に収録されている原音の方にノイズが入っているパターンもあります。原音のノイズはUTAUの音声合成の過程によるものではないため、UTAU側の操作で消すのは難しいです(ただし、下の参考欄のように条件が揃えばUTAU側の操作でも対応可能)。
この場合は使用している音源の配布場所を確認してみましょう。ノイズが修正された最新版が公開されているかもしれません。また、音源によっては別収録等で複数の種類の音源が公開されていることもありますので、自分が使っていない種類の音源を使用してみましょう。そちらの音源では原音にノイズがない可能性もあります。
エンベロープでノイズを消す方法
限定的な話ですが、
- ノイズがノートの前方部分(または後方)にある。
- ノイズが音声と重なっていない。
- ノイズのあるノートをセリフの先頭(ノイズがノートの後方部分にある場合は最後)に使用している。
以上3つの条件を満たしている場合はエンベロープの編集でノイズを消すことができます。
やり方は、まずノイズのあるノートを右クリック→エンベロープでエンベロープの編集画面を開きます。
そして下の画像のように、ノイズがノートの前方部分にある場合はエンベロープの端を右側に、後方にある場合は左側に移動させます。移動量はノイズの位置により変わってきますので、エンベロープを編集したら音声を再生してノイズが無くなっているか確認してください。無くなっていればこれで完了です。
要するに、この方法は「ノイズがある部分の音量を0にしてしまおう」ということですね。
なのでノイズがノートの音声と重なっていたり、ノイズのあるノートがセリフの中間部分にあったりするとこの方法は使えません。そのような場面で使ってしまうと、エンベロープを編集した部分で音声が途切れてしまいます。
連続音音源の「- あ」のようにセリフの先頭に配置される音声や、語尾息等でこの方法を使える場合が多いです。もしそれらの音声にノイズがあった場合は試してみてください。
最終手段 波形編集ソフトでノイズ除去
残念ながらここまでやってもなおノイズが改善しない、あるいは原音のノイズが修正された音源も公開されていない、といったことも当然あります。
諦めるのも1つの手ですが、
という方もいらっしゃると思います。その場合は波形編集ソフトを使ってみましょう。
波形編集ソフトは音声データを加工、編集するためのソフトです。これを使えば様々なノイズに対応できます。
ただし、全てのノイズを波形編集ソフトで完璧に除去するとなるとかなりの技量が求められます。また、波形編集ソフトにも色々と種類がありますので、使用するソフトによっては対応できないノイズもあるかもしれません。
個人的には、あくまで最終手段程度に捉えておくことをお勧めします。
Audacityを使ったノイズ除去
Audacityは無料で使える高性能な波形編集ソフトです。非常に人気のあるソフトで、使い方の解説サイトが豊富にあります。波形編集ソフトが初めての方には特におすすめです。
Audacityを使ったノイズの除去方法については、こちらのサイト様が特に分かりやすいです。リップノイズの除去方法について解説されていますが、UTAUで出力したwavファイルのノイズも同様に対応可能です。
また、原音にノイズがある場合はAudacityで直接原音のノイズ除去をするのも1つの手。原音のノイズが消えれば今後同じノートでノイズが発生することがなくなるので、頻繁に使う音源であれば特に効果ありです。その場合は、万が一に備えてノイズ除去する原音をコピーしておきましょう。
おまけ ホワイトノイズの除去
UTAU音源にはマイクの「サー」といった感じのノイズが原音に含まれているものがあったりします。これはいわゆるホワイトノイズと呼ばれるもので、Audacityの「ノイズの除去」というツールを使えば簡単に消せます。
このツールの使い方についてはこちらのサイト様が簡潔で分かりやすいです。是非ご参照ください。
最後に
今回はピッチ調声後のノイズの対処方法について解説しました。
ノイズは厄介なものが多いですが、今回取り上げたようなノイズは意外と簡単に消せますので、是非チャレンジしてみてください。
私がやっているピッチ調声についてはこちらの記事で解説しています。良ければ参考にしてみてくださいね!