個人的にずっと待っていた合成音声ライブラリ『エレノア・フォルテAI』がとうとう発売されました!
エレノア・フォルテ(Eleanor Forte)とはボーカルシンセサイザーソフト『Synthesizer V』用の音源ライブラリ。Synthesizer Vの最初期版の頃から公開されており、私のお気に入りな音源さんの1人です。
今までも無料のスタンダードLite版が公開されていたのですが、今回AI機能に対応したバージョンが発売されたということで、私も購入して使ってみました。
ここではその使用感や、今まで使っていたエレノア・フォルテのスタンダードLite版との違いを簡単にまとめていきます。参考になれば幸いです。
筆者はHANASUやトークロイドをやっている人間です。
なので今回の音源も「歌わせる」のではなく、「喋らせる」という使い方でのレビューになります。
作品例 こんな感じに喋ってくれます
実際にAI版エレノアちゃんを使用した作品がこちらの動画。
エレノアちゃんは英語音源なので、その英語っぽい発音を利用してうちでは『片言な日本語を喋るキャラ』として出演しています。英語もちょっとは喋りますがほぼ単語レベル(というのも、私が英語出来ないから単語くらいしか喋らせられない……)。
今回はこの動画で使用した調声データの一部を見ていきます。
AI版とスタンダードLite版を比較
見ていくのは「そもそもこれEnglishじゃなくてItalianだよ」というセリフ。上記動画の後半にあるやつですね(動画内では片言な感じを表現するためカタカナ表記ですが、本記事では読みやすさ優先で平仮名にしています)。

英語音源ということで、ノートは全部アルファベットで記入しています。
調声方法としては、まずローマ字で入力して再生し、日本語と異なる発音だったところはアルファベットを追加・修正する、という感じ。で、英単語のセリフに関してはそのまま1つのノートにした方がきれいに喋ってくれるのでそうしています。流石は英語音源。
ピッチの描き方は他の音源さんとほぼ違いはありません。強いて言えば、エレノアちゃんに関しては片言な感じが出るように意識して描いてるくらいですかね。まあ片言な感じってよくわかってないんで今回のピッチが本当に片言のそれになってるのかちょっと自信ないですが……。
というわけで、このセリフをAI版とスタンダードLite版それぞれで喋ってもらいました。
聞き比べてまず思ったのは声質の違い。AI版エレノアちゃんはデフォルトの状態だと結構ハスキーな声なのでパラメータのジェンダーを下げているのですが(上記画像参照)、スタンダードLite版の方はその影響がもろに出てかなり幼い声になっています。なので比較しやすいようジェンダーを調節したやつも作りました(ジェンダーを-0.5→-0.275に変更)。
この2つを比べてみると、AI版の方がより滑らかな発音、スタンダードLite版はよりハキハキとした発音といった印象です。「なくて」の辺りを聞き比べると分かりやすいかも知れません。
はっきりと分かる違いはこんなものでしょうか。以前記事にしたSynthesizer V版弦巻マキちゃんはAI版とスタンダード版で人間らしさ・合成音声らしさという違いがありましたが、エレノアちゃんに関してはそういった差はあまり感じないですね。もともとのスタンダードLite版がかなり人間らしい発音をしてくれる子だっただけに、AI版になっても差が出にくいのかも知れません。
機能面では明確な違いがある
しかし、機能面で見れば明確な違いが見られます。
というのもAI版だけが使える機能がるんですよね。
上のマキちゃんの記事で触れているトーンシフトもそうですが、もう1つなかなか便利な機能があります。
それが多言語歌声合成機能。
Synthesizer V studio proのバージョン1.5.0で追加された機能で、1つの音源で日本語、英語、中国語を切り替えて使うことができます。
つまり英語音源のエレノアちゃんでも簡単に日本語を喋らせることが可能なんです。Synthesizer Vすごい……。

これはスタンダードLite版のエレノアちゃんには対応していない機能なので
という方はAI版エレノアちゃんのほうが向いていますね。
ただし、この機能を使うと当然発音も日本語っぽくなります。私のように英語の発音を利用した片言な感じの喋りは出にくくなるのでご注意下さい。
まとめ
以上、エレノアちゃんのAI版とスタンダードLite版の違いをまとめるとこんな感じです。
AI版
- 滑らかな発音
- スタンダードLite版よりややハスキーな声質
- AI版専用の機能(トーンシフトや多言語歌声合成)が使用可能
スタンダードLite版
- ハキハキとした発音
- AI版より幼めな声質
- トーンシフトや多言語歌声合成といった機能は使用できない
やはりAI版の大きなメリットは多言語歌声合成機能ですね。1つの音源で複数の言語を扱えるというお得感はなかなかのもの。
そして何より英語音源のエレノアちゃんを日本語音源としても使用できるので「英語できないから英語音源はちょっと……」という方でも気軽に使えるのは素晴らしいですね。
ただ、『人間らしさ』を求める場合はスタンダードLite版もAI版と遜色ないレベルです。英語での使用が問題ないのであれば無料であるこちらを使うのもアリ。
因みにエレノア・フォルテAIにも無料のLite版(多言語歌声合成には非対応)が販売先のANiCUTEより公開されています。スタンダードLite版も同じく公開されているので、まずはそれぞれを使ってみてどちらの声質が好みか確認するのがオススメです。その上でAI版の方が好みで、日本語音源のように使いたいという方は製品版を検討するとよいでしょう。
なお、多言語歌声合成はSynthesizer V studio proの機能なので、使いたい場合はこちらも用意する必要があります。


